ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

キャバレー オリジナル・サウンドトラック

1986年


男にはダンディズム、女にはロマンス。絶望から生まれた希望の時代

 『キャバレー』は、角川春樹事務所創立10周年記念作品として、角川春樹自ら監督した映画(監督作としては3本目)。主演は野村宏伸、鹿賀丈史、三原じゅん子という、いまいちパッとしない面々なのだけれど、なにしろ記念作品なので、ゲスト出演がすごい。薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の角川三姉妹はもちろん、千葉真一、真田広之、志穂美悦子のJAC軍団、夏八木勲に丹波哲郎まで出ているらしい。「らしい」と言うのは、実は、私はこの映画を見ていないのだね。邦画界に一大センセーションを巻き起こした角川映画(って言うか角川春樹)ですが、劇場で見た角川映画は『幻魔大戦』(1983年)と『天河伝説殺人事件』(1991年)だけ。他の作品は随分後になってから、テレビやビデオで見たくらいなのです。

 なにしろ角川映画の全盛期は1970年代末から1980年代半ばといったところで、その当時の私(小、中学生時代)は、自分一人で映画を見に行くなんて不良なことはしない、貧しい良い子だったのだ(ついでに言うと、現在に至るも、キャバレーなんてところには行ったことがない、貧しい良い大人である)。東映まんがまつりではない大人向け映画で、親に連れられて見に行った記憶のある『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』『007 オクトパシー』は、ともに1983年で、私は14歳。同じ年に『ゴジラ1983 復活フェスティバル』があって(ゴジラクラブにも入会してましたよ)、これは友人と見に行った覚えがあるから、これが初めて自分だけで見に行った映画だったのだろうなぁ。もっとも、当時はアルバイトなんかしてなかったし、小遣いも限られてるから、大学に入るまで、映画館に行くなんてことは、ほとんどなかったと思う。復活ゴジラが1985年、『007 リビング・デイライツ』が1987年か。大学に入ったのが1987年やもんな。そんなもんか。

 で、『キャバレー』を見に行くことはなかったのだけれど、当時、テレビでバンバン流れまくったCMが、やたらとカッコ良かったのを覚えている。ちょっとセピアな画面に「Left Alone」が渋く流れる。これがジャズ・ピアニスト、マル・ウォルドロンによる名曲で、作詞したのが女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家の1人ビリー・ホリデイだったなんてことも、当時は知らなかった。この曲の入ったアルバム『レフト・アローン』は、ビリー・ホリデイの伴奏者を務めたマル・ウォルドロンが、ビリー・ホリデイへの哀悼の意を込めて制作したもので、サックス奏者ジャッキー・マクリーンの泣き節が堪能できるなんてことを知るのは、20年くらい経ってからだ。このサントラでは、サックスによるインストと、マリーンが歌ってるバージョンとが入っていて、どっちもカッコ良すぎて泣けてくる。更に、誰でも知ってる「Star Dust」や、この当時は全然知らなかったけれど、モダン・ジャズの有名曲「Now's the Time」(作曲はチャーリー・パーカー)も入っている。音楽担当は角川春樹とクレジットされていたけれど、実際には佐久間正英や、サックス奏者の大友義雄が作曲していて、ジャズのアルバムとして聞いてみてもイイ感じの名盤。そうじゃない楽しみ方としては、「Side by Side」を渡辺典子が歌っているのが目玉。渡辺典子の歌なんて♪口移しにメルヘンください~の「少年ケニヤ」とか、♪晴ぁれ、ときどきキルミーしか知らんぞという方、必聴です。あ、白竜が「Wrap Your Troubles in Dreams」を歌ってる。なんや、この渋すぎるチョイス。


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