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ダイキチデラックス

デイブ・パイク DAVE PIKE


 見よ、このジャケット!もぉこれを見たら、内容がどうだろうが、誰が演奏してようが関係ない!見たら即、ジャケ買いしなきゃ嘘だ!で、買ってホクホク顔で家に持って帰ったら、中身を聞かなくても、飾っておくだけでOKだ!そんな『JAZZ FOR THE JET SET』(1966年録音)であります。
 更にもうひとつジャケ買いのアルバムが『マンハッタン・ラテン』(1964年録音)。何も言うことはございませんね。そう言えば、HMVのネット通販でCDを買ったとき、ケースだけで中身が入ってなかったことがあったなぁ。あの輸入盤特有のピチーッとしたビニールで包まれていたから、製造時点で既にCDを入れ忘れていたのだと思うけれど、開けたときはビックリしました。一瞬、我が目を疑ったね。どうせえっちゅうねん、てなもんですわ。もちろんHMVに連絡して取替えてもらいましたけどね。取替えてもらおうと思ったら廃盤で品切れって言われたら目も当てられんですな。実物のケースを見ているだけに諦めきれんでしょうねぇ。まぁ、そんなことはさておき、このアルバム、もちろん中身もゴキゲンです。心斎橋筋名店街御案内な感じ(分かる奴だけ納得してくれ)のラウンジーな曲が目白押し。


 デイブ・パイクは、多分ゲテモノ系に位置付けて聞くのが正解だと思うので、各種ガイド本の、『パイクス・ピーク』(1962年録音)しか紹介しないという姿勢には猛烈に反発したいお年頃なのである。ヴァイブのアルバムというのは紹介される機会が少なく、また、デイブ・パイクなんて人は特別有名でもないので、紹介されるだけありがたいというようなものなのかも知れませんが、このアルバムにしたところで、ビル・エヴァンスがメンバーに入っている、という点だけで紹介されているので、余計に腹が立つのである。


 ビル・エヴァンスがなんぼ偉いか知らんが(確かにジャズ界における重要性ということを言えば遥かに上なのでしょうけれど)、ヴァイブのアルバムはヴァイブで評価しろよ、と思うのである。ちゃんとあるのよ、オーソドックスで素晴らしいアルバムが。『Pike's Groove』(1986年録音)。こういうのを無視しちゃいけませんねぇ。


 しかし、やっぱりゲテモノの方が楽しいんですけどね。バンバン行っちゃうぞ。『ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ』(1969年録音)。本領発揮のゲテモノ系。ジャケットからして、こんな感じ。時代を感じさせるサイケでLSDな雰囲気満点。そして、そんな時代のもう一つの特徴、それがインドへの傾倒である。なんだか精神世界みたいなものに西洋の人は弱いですな。で、変な宗教に走るわけですな。どうも、あの宗教に走る気持ちという奴が私には理解できないんですけどね。「おらが裏の畑へ行こうとしたらオレンジ色の光が降りてきただよ」って、アイダホの農夫とかが言うような奴なら可愛いんですが。そう言えば、ああいうのって必ずズーズー弁で吹き替えているけれど、あれって差別じゃないの?まぁ、差別だ偏見だなんてものがないと、世の中面白くもなんともなくなりますけれど。さて、このアルバムではインド楽器といえばこれ!のシタールによる「マタール」が聞けます。インドといえばシタール、っていうのも偏見かも知れませんが、それもよし。


 更に南国気分満点、ひとつご陽気に参りましょうという『Carnavals』(1962年録音)。実は、これ『ボサ・ノヴァ・カーニバル』『リンボ・カーニバル』という2枚のアルバムを1枚にしちゃったお徳用なのです。 しかしオーソドックスなジャズからラウンジー、サイケデリック、挙句の果ては大宴会と節操のない人ですねぇ。いや、貶しているんじゃないですよ。こういうアーティストこそ聞きまくる価値のある人なのです。同じことをやっていて良いのはズート・シムズだけなのよ。
 さて、このアルバムに入っている「セント・トーマス」という曲。皆さん御存知ですね。ジャズといえば必ず紹介される天下御免の大名盤、モダンジャズの精髄、でも、なんだかんだ言ってもマイルス・デイビスの『カインド・オブ・ブルー』には勝てない哀しい宿命を背負ったジャズ界の『Yの悲劇』(分かる人だけ笑ってくれ)、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』に収録されている、あの曲です。この曲のベスト演奏がこれではないでしょうか。曲のエッセンスというものを見事に引き出しています。こういう風に演奏されたがっていた曲なのだなぁと感心も得心もいたしましたよ。その他には「ラ・バンバ」まで聞けるというサービスぶり。これを聞いて踊り狂って、浮世の憂さを晴らしましょう!



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