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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

カル・ジェイダー CAL TJADER


 ラテン・ヴァイブ。なんだか知りませんが口にしただけで卑猥な響きです。腰を振り振り地井武男、いやチッチキチー、いやチーパッパ。というわけで、明るく楽しいヴァイブの帝王、カル・ジェイダーの登場です。カル・ジェイダーこそラテン・ヴァイブの王者。ヴァイブのあの音色は夜のイメージの深刻なジャズにも、太陽カンカン照りのラテンの陽気なイメージにも合うのです。なんて素晴らしい楽器でしょう。朝昼晩とヴァイブ漬け。まぁ要するにヴァイブならなんでもOKな感じなのですが。


 で、一押しアルバムはこれ。『AMAZONAS』(1975年録音)。派手さが増してエレキギターだのシンセだのが唸りまくっています。大編成になるとヴァイブが後ろに引っ込みすぎて、何のアルバムやらさっぱり分からない、というようなことが往々にしてあるのですが、その点は大丈夫。キッチリばっちりヴァイブが鳴り響いております。さすがカル・ジェイダー。ひょっとして自己主張しまくりのイヤな奴か?そんなことじゃ日本社会にゃ溶け込めないぞ。さて、ここまで来ると「レッテルなんてドーデモイイ」というのが実感としてお分かりいただけるのではないでしょうか。実際、ジャズとは?と訊かれて明確に定義なんてできませんし、強いて言えば、レコード屋のジャズのコーナーに置いてあるのがジャズ、っていうことでしょうか。とにかく楽しくて気持ち良いんですから、ジャズだろうがみちのくひとり旅だろうがお構いなしなのです。


 「ラテン・ヴァイブって具体的にはどんなの?」と訊かれたら差し出すのがこれ。『Soul Sauce』(1964年録音)。タバスコのジャケットが洒落ているこのアルバムは、ラテンな感じの代表作。ところでタバスコの輸入世界一って日本らしいですね。アントニオ猪木は商売上手ですね。しかし、そんなに使うんですかね?確かにイタリア料理店で食うトマトソースのパスタなんてのは甘ったるい気がしますけどね。しかし、一度に消費する量なんて高が知れているでしょ。もぉ日本中の人間がタバスコ振りまくっているのか?そうね、スパゲティにはかけるわね。ピザにもかけるな。ピザはやっぱり、アンチョビでしょ。チーズとトマトとアンチョビとオリーブだけで十分なんですけど、そんなシンプルな奴、あんまり見ませんね。


 それはさておき、「こんなのジャズじゃない!」なんて思っている方。『ザ・プロフェット』(1968年録音)のジャケットを見てちょうだい。「あ、この人、狂っているな」ってのが分かりますね。眉間に皺寄せて、薄暗い地下の喫茶店で一人マルエン全集かなんか読みながら聞く音楽ではありえないですね。そういうのだけがジャズだと思っている人、大損です。これもジャズです、多分。まぁ、ジャズじゃなかったとしましょう。なんでもイイや、レッテルなんて。ジャズしか聞かないから、カル・ジェイダーなんて知らない、という人、丸損です。ジャズじゃなくたって楽しい音楽は腐るほどあるのです。カル・ジェイダーは、そういう視点で楽しまなきゃダメです。というわけで、このアルバム、コーラスまで入っております。それを邪道だのなんだのと非難するのはお門違い。ラウンジ度アップで気持ちイ〜イ、と思わなきゃ損なのです。あぁ気持ちイイ。


  気持ちよくなってきたところに水を差すようで悪いですが、『tjader』が何故「ジェイダー」と読めるのでしょう?最初の『t』の立場はどうなっているの?どうもアルファベットはよぉ分からん。大体、私はいまだにキーボードをかな打ちしていますからね。ローマ字打ちなんて、かったるくてやっとられんわ。いちいち頭の中でローマ字に変換して打ち込まなあかんやん。26文字のキーボード配列を憶える方が50文字の仮名より早いって言うけど、頭の中でのローマ字変換の手間を考えたら、かな打ちの方が絶対早いっちゅうねん。そんなことはさておき『Tambu』(1973年録音)はギターのチャーリー・バードとの競演盤。チャーリー・バードといえば、スタン・ゲッツと組んだ『ジャズ・サンバ』が有名ですね。超有名な『ゲッツ/ジルベルト』より、知名度では劣っても内容は素晴らしいと断言しちゃおう。そんなチャーリー・バードなので、カル・ジェイダーと組んでも嬉し楽しの内容に仕上がっています。


 挙句の果てはマンボですぜ。『Tjader Plays Mambo』(1954、1956年録音)ウッ!「なんや、ジャズのコーナーと違うんかい」なんて野暮なことは言いっこなし。楽しけりゃいいんですから、なんでもアリよ。特にカル・ジェイダーなんて人をジャズという狭い世界に押し込めるなんてことをしたらあきまへん。というわけで、見よ、この妖しげなジャケット。このジャケットを見て「買おう!」と思えるか「こいつはちょっと……」と二の足踏むかであなたの人生エンジョイ度が判定できます。当然「買おう!」と思う方が健全ですね。もちろんジャケットだけでなく、演奏も楽しいですよ。ついでに姉妹品『Mambo With Tjader』ですね。私としては、ジャケットは、こっちの方が好みです。併せてどーぞ。


 そして究極の軟弱盤。『SOUNDS OUT BURT BACHARACH』(1968年録音)。なんとバート・バカラックのカバー集ですよ。なんてラウンジーな企画モノでしょう。しかし、これこそヴァイブの楽しさの本道かもしれません。