バート・ゴールドブラット　カバー・アート

2008年

シンプルなデザインを楽しむ

　ジャズのアルバム・ジャケットをデザインしたバート・ゴールドブラットの作品集。監修したのはジャズ喫茶店主にしてジャズ評論家である寺島靖国。1950、60年代の作品を205タイトル収録。ジャズってのは雰囲気が大事な音楽なので、ジャケット・デザインの果たす役割はトテモ大きい。バート・ゴールドブラットは、写真家でイラストレイターでデザイナーという人で、ジャズの雰囲気づくりに大いに貢献したのである。

　で、この作品集なのだが、デザイナーとしてのセンスという点では、残念ながらブルーノートで仕事していたリード・マイルスに軍配が上がると思う。それは『ブルーノート　アルバム・カバー・アート』を見てもらえば分ると思うが、タイポグラフィの巧みさという点で、リード・マイルスがはるかに勝っているからだ。写真自体は悪くないし、シンプルに単色で染めて、控えめに文字を配置したものはスッキリしてて良いのだが、「おっ！」と思うような出来にはなっていない。ひょっとしたら自分で撮った写真だから、素材と割り切って自由にデザインできなかったのかもしれない。

　私は、どちらかというとイラストレイターとしての仕事に惹かれる。この本に掲載されているようなイラストは、確かに50、60年代にしか生まれなかっただろうと思うからだ。私はジャズをノスタルジーで聞く（昔流行った音楽として味わう）タイプなので、こういう古めかしいイラストに惹かれるのだろう。決してキレイな絵ではないけれど、何とも言えない味わいがある。ボーリングシャツにプリントしてあったら買ってしまうだろうなと思わせるデザインだ。とかなんとか言いながら、ここに載っているアルバムのうち、私が持ってるのは３枚だけだったけどね。

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